愛するということ 第二章 8


柔らかいベッドへ横になった。天井に貼ってある蛍光のプラスチックで出来た幾つかの
星がこの部屋を包む闇をあたかも照らしている様に見えた。
果たして今夜も、未だかつて体験した事の無いエロス色でいて何故か痛々しい響きがあ
の寝室からこだまするのだろうか? 無意識の内に彼女の股間は内側からとても熱くなっ
ていた。
知子は眼を閉じた。初めて聞いた甘い音色が過激なイメージとなり、何度も何度も繰り
返し再生された。次第に股間の秘部がどんどん濡れて来るのを感じる。彼女はたまらず下
半身をくねらせ脚の隙間を塞ぐ様に力を入れた。
やがては理性を失った右手が胸を軽く触り、それからゆっくりと股間へ滑らせていく。
熱った局部あたりへ知子のしなやかな指がとうとう到達した。右手はスカート捲り、白い
下着上から秘部の先端に小さく勃起した熱い表面を優しくゆっくり摩る様にして撫でた。
嗚呼
――

少女の体は敏感に反応した。
摩られた局部が麻痺する様な感覚を過ぎた頃、知子の内部から官能的な大人の快感が目
覚め、それが何処までも気持ちよく響き始めた。その覚醒された感覚に反応するように、
知子の右指はたまらず白い下着を退け、ゆっくりと中指を小さな口の中へと送り込んだ。
嗚呼……。
知子は心中で辱めを受けている様に、とても甘く喘ぎ続けた。
時間は翌日の丑三つ時を指している。あれから恵が寝室に入ろうとドアを叩いたり「中
に入れて」等と色々煩かったが、知子は断固としてボタン式の鍵を開けることをしなかっ
た。生まれて始めての性的なる行為をした後の自分を誰にも見せたくは無かった。
知子は自分自身に対して恥ずかしかった。しかし、皮膚の外側からも温もりを感じる、
理性を失った彼女の指はしばらくの間止まる事が無かった。
感情を非常に高ぶらせた知子は酷く疲れていたが、それでも覚醒された脳は落ち着く事
を知らなかった。そして、気が付けばこの時間になっていた。そろそろあの寝室で、また
しても大人の夜が始まるに違いない。先ほど寝室へ入り行くフローリングの軋みを知子は
周波数を合わせた耳で確実に捉えていた。
彼女は柔らかい羽毛ベッドから起き、薄紅色のカーペット上を歩んでドアへと向う。昨
夜から開けることの無かったノブを回し、それからゆっくりと開けた。
スリッパをあえて履かず靴下の状態で廊下へ出た。この時点ではまだ甘い音色は聞こえ
ない。知子は官能の極みに達した自身の体が求めるかの様に、自然に倫子の寝室の扉へ歩
み寄った。目的の場所まで辿り着く。彼女は前回と同じく聞き耳をそっと深く扉に当てた ―― 。
「嗚呼!」
瞬間、大きな喘ぎ声が知子の耳を襲った。
一瞬で知子の顔が赤面する。即座にドアから聞き耳を離し両手で口を塞いだ。その後、
何とか落ち着きを取り戻し、再度、耳を当ててみる。
「もう許してください。嗚呼!」
倫子が喘ぎながらそう言っているのが聞こえた。
「許して下さいだと? よくもそんなこと言えたもんだな」
徹が即答した。
「お前には一生美代子の代わりをしてもらうぞ。そう約束したはずだ。何を今更」
――美代子? 一体誰の事を言っているのだろう? あっ!

美代子

とは恐らく山田徹の婚約者だ。彼の様子が急変する前の年の盆、徹が一緒に
連れ添いながら来客してきた女性
――
。名前は確か

中川美代子

。南国の地で育ったとは思
えぬほどの透き通るような色白で狐顔をした美人だった。知子は徹らが帰った後、密かに
狸と狐美人は不似合いだと倫子に話し笑いを誘った覚えがある。
美代子の代わり? でも、どうして御母さんが?
この時、知子にはどうしてもこの謎が解けなかった。しかし、全てはその後の会話が彼
女に与えられた問題をいとも簡単に解決させてくれた。
「お願い。子供達の居るこの家では
……
。嗚呼!」
「気持ち良さそうに喘ぎながら何言ってやがる。お前はもう全て従うしかないんだよ。あ
の晩からな! 恨むなら、除霊を失敗した自分を恨むんだな」
その言葉が徹の口から発せられた瞬間、 「ガタン」と言う音が鳴った。どうやら倫子が裸
体に乗りかかる徹を力ずくで払い除けた様だ。その後、部屋の中は急に静まり返った。
「あれは失敗と言うよりも仕方が無かったの。ああなるしかなかったの。たとえもう一つ
が違ったとしても。徹さん、運命は何かの答えのために導かれているのよ」
一呼吸後に倫子が徹へ力なく呟いた。

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