@原付バイクと風景画 4


@原付バイクと風景画 4

 旅疲れがどっと押し寄せた瞬間でもあった。手荷物を置くと鍵を閉めてから、徒歩で近くの砂浜へと向かった。歩いて五分ばかりの場所にそれはあった。
「わぁ! きれい!」
「うふふそうね」
「ねねね、お母さん。なんか砂がキュッキュッて音が鳴るよ!」
「鳴き砂と言って、ここにしかないものなの。どう? めずらしいでしょう?」
「うん!」
 遥はあまりの暑さに咲子へ泳いでみたい!と申し出たが、咲子は風邪をひくだけよと許可しなかった。しゅんとした遥は立ち直るのが早かった。こんどは砂浜を駆けると、おかあさん、こっちだよ! と満面の笑みを浮かべる。それを見ていると、咲子はこの島へ来て本当に良かったな。と、思
 四月からの新学期は宮古小学校へ遥と同伴し、あいさつしてまわることが決まっていて、それを考えると咲子は気が気ではなかった。ほんとうにこれからしばらくは大変ね。身体の具合が悪くならなければよいけれど……。彼女は心配した。しかし、そんなこと言ってられないものね。よし、がんばるか! 咲子は心の中でそう気合を入れなおした。母親の責任とはこれほどまでに重いものとは、独身時代の時には考えもしなかった。只、流されるままに交際し、流されるまま結婚し、流されるままについてきた。その先での亭主の裏切り。それはもう立派な大罪。当初はすぐに離婚も考えた。考える暇がなかった。
 事件とは突然訪れては、あっというまに警察が持ち去る。話し合いの機会などもてはしなかった。咲子はとても悔しかった。悔しくて悔しくて仕方がなかった。どうして私がいるのに、どうしてなの? 夜な夜なひとり、もがき苦しんでいた。頭が狂いだしてしまいそう。しかし、それでも正常を保てたのは、紛れもなく遥がいることが大きかった。遥が母を救ったのだ。
 咲子はとても責任感のある女性。遥を絶対に守る。この一心。おなかを膨らまして、おなかを痛めて、苦しんで苦しんでようやく産まれてきた遥は、咲子にとって生涯の宝物。泣いてなどいられないけれど、泣きたいくらいに大切な存在なのだ。
 遥はまだおさない。これからきっと苦労するでしょうね。いろんなことがあると思う。実に様々なことがあるとはおもう。けれども、咲子は遥にどうか幸せになってほしかった。毎日、毎日、そう願っていた。
 嗚呼、神様が本当にいるのならば、どうかお願いです。こんなにもかわいい子をどうか未来永劫、お守りください。おねがいします、神様。咲子はついそう思ったこともあった。暫くしてから親子は帰宅した。
 部屋に着いたあと、咲子は散歩見つけていた小さなスーパーへ夕ご飯の買い出しへと向かった。今夜は何にしようかしら? などと言う事は考えていなかった。もう決まっていたのだ。それは、遥の大好きなカレーライス。
 スーパーにはあまり品がそろっていないのと、持ち合わせを節約しなければならなかったために、鳥の胸肉と人参だけのカレールーになった。それを水っぽく伸ばしてから食する。これではまるで刑務所のカレーライスだが、遥と言えば、これが当たり前だと思っていたので何も言わなかった。
 カレーライスを食べているときに、咲子は遥へ「あしたは近所さんにあいさつに行きましょうね」とだけ話していた。遥は元気に「うん!」と返すのだった。次の日にな

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