@原付バイクと風景画 9


@原付バイクと風景画 9

 北海道から転校してきました! 兒玉遥です! なかよくしてください! よろしくおねがいします!」と。そして周囲はざわついていた。北海道ってどこ――? などと言った具合に。
 遥は視力が良かった。それも含めて学級の席順は決めていたに違いなかった。彼女はいちばんうしろの席。となりには土色にたくましさを感じさせる男の子。
「よう!」
 その子の第一声はそれ。
 遥はじどろもどろで
「ん?」
 と返した。さすがの遥も少しだけ緊張していた。
 男の子は次に言った。
「おまえ、かわいいな! よろしく。おれ、剛っていうんだ!」
 と。
 遥はびっくりしたようにして、
「つ、剛君でいいの?」
 と返事した。
「うん!」
 そう言って剛君は笑顔を見せた。
 担任の先生がみんなに遥さんが座ったところで、自己紹介を皆さんもしましょう。と発した。先生は女性教師。三十歳くらいのほっそりとした色白の美人である。おそらくは日焼け止めや日傘を普段から使用していたのだろう。この島には珍しく、日焼けは一切していなかった。髪の毛はロングのストレート。もちろん黒だ。端からひとりずつ起立をしてから遥に向かって自己紹介をした。遥はその一回ではとても全員の名前は覚えられなかったが、それでも、休み時間になればみんなが集まって、名前を憶えてなくとも仲良くなれた。よかった。遥は思った。先生は遥が絵が得意だと言う事をあらかじめ知っていた。情報を得ていたわけである。先生の名前は「金城里美」と言った。
「遥ちゃん」
 里美先生が放課後、声をかけてきた。もともと生徒数が少なかったために、遥を呼び止めるのに苦労はしなかったようだ。遥は返した。
「はい?」
「遥さんは絵が上手みたいね」
上手ってなんですか?」
「うまいってことよ。今度、先生に絵を見せてもらえない?」
 言って里美先生はさらに微笑んだ。
「はい!」
 二人は別れた。夜、夕食を取りながら遥は咲子に今日の出来事を話した。里美先生の事、隣席の剛君の事、同級生の事、休み時間の事、そして絵の話など、包み隠さずに話をした。
「たのしかった!」
 それが遥の気持ちだった。
「そう、よかったわね」
 咲子はどうやら一安心した。遥も肩の力が抜けたようにして今日の朝の緊張がほぐれていた様子だったものだから、遥の心配はしなくてよさそうね。と、ひとりそう思った。今

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