@原付バイクと風景画 23

 


@原付バイクと風景画 23

は何とも思わなかったが、遥はこの店が一体何なのか、ホームセンターか何かなのか、そんなことは考えなかった。只、いろんな車さんが停まっているなと、楽しい気持ちになっていた。店の中に入るのが楽しみ。どんなびっくり箱なんだろう? そんな気持ち。店内に入る。

 突然、冷たい空気が肌を覆った。冷房である。遥はひさしぶりの涼しさに歓喜となった。それは里美も同じようなもの。宮古島の照りつける太陽は肌にとても過酷すぎた。頭の上部も湯気が出るほどだ。暑かった。暑いと言うよりもフライパンのような熱さ。完全とした熱気であった。掻暮なる狂熱であった。それは、シュワーッと炭酸水のように喉越しが爽快なのと似たようなもので、冷房もまた、汗だくでくたびれた身体に快適さを体感させる。店内はすっかり全面冬着のコーナーのようなもの。里美は遥を横にして、おもむろに冬服をあさる。探しているうちに丁度良いのがあった。サイズを服越しにはかる。それから試着をさせてみた。うん、似合っている。とてもワンピースと合っているわね。里美はそう言うと、買い物かごにその上着を入れた。それが二、三度続。服はこれくらいでいいかな? 二人は店内をぐるりと一周だけ舐めるようにして確認したのちレジへと進む。これで今日の買い物は済ませた。

「さあ、帰りましょうね」

「せんせい……

「ん? なあに? 遥ちゃん」

「画廊に……、行きたい」

「え? 画廊、気に入ってくれてたの? うれしい! ぜひ、ぜひ、寄りましょう

「うん!」

 遥と里美は満面の笑みを浮かべて自転車に乗り込んだ。荷物は自転車のかごに載せてある。邪魔にはならなかった。斉藤のぶこし画伯の画廊はこの街のはずれにぽつんとある。非常に目立たない質素な外装であった。しかしながら、観光マップにちゃんと載っているためか、訪問客は多かったし、オークション参加者も一般的な画家などよりも桁違いによかった。今日、画伯は海外遠征によりいなかったけれど、代理人と話すことができた。その際、コンクールの話しもした。代理人は国際電話で連絡しておきます、とだけ返していた。一時間ばかり画伯の絵を鑑賞したのち、画廊を出て二人は帰った。

「コンクールの結果、たのしみね

「うん!」

 遥は徐々に里美おかあさんに馴染んできてはいる様子。少しずつ、少しずつ。そう、それでいいのよ。全然かまわないわ。だってそうでしょ? わたしは私が心を満たすために遥ちゃんを預かっているわけではないもの。すべては遥ちゃんのためなのよ。彼女の夢を手助けする以外には自由奔放でいいじゃない。遥ちゃんの好きに接してくれればそれでいいのよ。里美はそう考えながらこれまでもこれからも生活を送っていく。それはそれで素晴らしかったし、けっして憎いものではなかった。そしていつかは旅立つ。わたしから、本当のお母さんから。里美は何だか悲しくなった。涙が潤んだ。いけない! 抑えなきゃ――! つい力を抜くと涙腺が緩む。仕方のないこと。嗚呼、これはきっと生涯続くのでしょうね。里美は先生として、義母として、誠心誠意この子を育てていこうと思った。だけれど、そう力む必要もまた不必要でもあるものね。その力加減が難しいが、とにかく自然に生きましょう。生きてゆきなさい。と、テレパシーで贈る事にしていた。それに気が付くのは、遥ちゃんが大人になってからでしょうね。そう感じながら。

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