@原付バイクと風景画 14


@原付バイクと風景画 14

原石をとにかく英才教育でもっともっと磨いていかなければ――。里美は常々そう思っていたものだから、学科の方にも力が入った。もちろん、途方もない美術史の勉強もした。遥は時々気が遠くなったが、しっかりとノートにメモし無理やりと頭に叩き込んでいた。
「里美先生、はるか、絵を描きたい……
 遥はとうとう頭が疲れだして集中力が途切れていた。
「うふふ 疲れちゃったのね。いいわ、今日はこれくらいにしておきましょう。来週からは今日みたいに少しだけ絵の勉強をしてから絵を描きに行きましょうね
「はい!」
「うふふ ほら、もう元気になっちゃって。絵を描くことが本当に好きなのね」
「うん!」
 こうして、遥と里美先生はいつもの岬へと絵を描きに行く。途中、剛が来た。”――はるか! せんせい!遥と里美先生の二人が振り返る。剛は焼けた皮膚から白い歯を目立たすようにしてにこっと微笑み、おれも紙と絵具もってきた!と歯切れよく大声を発する。三人は並んで座り、黙々と岬の絵を描いた。
「遥ちゃん。そろそろお昼ご飯食べましょう」
 途中、里美先生が言った。遥は承知した。剛は家からおにぎりをこさえていた。三人は囲って食事を楽しんだ。その最中。里美が言った。
「二学期に全国絵画コンクールがあるから遥ちゃん出してみようね
「ぜんこく、かいがこんくーる?」
「絵のコンテストよ」
 里美先生は詳しく説明して見せた。全国の小学生が学年ごとに競う絵画コンクールのことを。遥はそんなものには興味が無かったが、里美がどうしてもというものだから、まあ、それはいいのだけれど、とりあえずじぶんは何も考えずに描きつづけることだけを意識する。それだけ。みたいなことを思ったし、何も難しく考えたくはなかった。かいが、おれも――! 剛君は叫ぶ。しかし、そんなみんながみんな作品を出せるなら、それが許されるなら、それらは全国から届くということで、審査員が困ってしまう。里美はそう説明して剛をあきらめさせた。――ちぇ! いいなぁ! 剛君は本当にうらやましがっている様子だったものだから、遥はそれを見ていてなんだかおかしくてしょうがなくなった。くすくすと表に出してしまっていた。嗚呼、なんてすばらしい日々なのかしら。里美先生はそんなことを思った。それは、この天才少女と出会ったことも一理ある。しかしながら、それ以上にこの温かみのある毎日が里美にとってはお気に入りそのものだったのであった。
 咲子の病状は悪化の一途をたどるばかり。今月の検診の際、CTスキャンの影が大きくなっているのが確認できた。彼女は北海道の頃から末期癌。咲子は思った。私が死んだあと、誰が遥の面倒を見てくれるのか? と。それを考えると、とてもじゃないが、今、死ぬわけにはいかなかった。しかしながら、入院中、遥の面倒を見てくれるものさえいなかったために、もはや末期がんなら自宅で死のうと決め込んでいた。それに手術をするとよけいに死期が早くなるとも話を聞いたことがあったので、躊躇した考えもあった。咲子は、自分の故郷の話をしておかなければならないと最近になって思うようになっていた。そこで遥を面倒見てくれる可能性は非常に少なかったが、藁をもつかみたい一心。それとも、里美先生にお願いしようかしら? そんな迷惑なことさえ考えたことも確かにあったものだから、本当に心は一杯いっぱいであった。
 遥は今日の日曜日も里美先生と一緒。里美は最近、遥ちゃんのお母さんと会っていなか

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