@原付バイクと風景画 17


@原付バイクと風景画 17

 二人は海辺へ駆け足した。とてもひろい砂浜は、すこしだけ海水浴客がたむろしており独占的ではなかったが、それでも遥と剛は二人だけの世界に居た。波打ち際を蹴る。蹴りつける。互いの顔に海水が掛かる。浴びる。手ですくったりもして投げつける。そうれ――! またもや二人はびしょびしょになった。太陽はそれを急速に乾かす。暑さで乾かす。遥と剛はとうとう水の中に飛び込む。身を投じる。ばしゃんと。乾ききった肌が思い切りよく潤う。潤う。それはなんてこともなかったようにして、只々、自然任せ。成り行きでしかなかった。でも、でもね、きいて。剛君。わたしね、ずっと泳いでみたかったの。それが今日、こうして叶った。遥の願いは叶ったのだ。嗚呼、夏はいいな。ふとしたことから剛は思う。本当に良かった。と。遥が海水にひたらせた上着を剛に向けた。桃色のおさない乳首が透けて見える。剛はそれがなんだか見ていて恥ずかしかったし、なんとかならないものかと悩んだ。結果、剛は自身の上着を脱ぐことしかできなかった。俺の乳首も魅せてやる。そうとまでは思わなかったが、とにかく上半身を遥に見せたかった。たくましい上半身を見て、遥は何だか乳首が勃起した。そうでもなかった。まだまだ二人は幼い。そこまで性的感情を持ち合わせてはいなかったものだから、正直、男と女と言うよりは只の友達。それでしかなかった。そうであった。ねえねえ、追いかけっこしよう。遥が言う。ここでか? 泳いだ状態でするのか? と、剛はそう尋ねたつもり。遥は返した。そうよ と。ふたりはまるでトビウオのようにして海面を飛んだり跳ねたりしながら、こちらからあそこのほうへと移動していく。それはごく自然なこと。ここに砂浜があったとして、いやちがう。あくまでも砂浜の上に海水があるわけで、その中に遥と剛は遊んで居るわけだが、どうやらそこの世界は、あたかもドルフィンスルーをするボディーボーダーのように、サーファーのように、そして、イルカの恋人同士のように辺り中からは見えた。やがては疲れ切った。つかれてしまっていた。遥と剛は陸に上がると、斜めにある砂浜の上で横になった。敷物などは一切ない。只々、太陽を体中で受けたかったし、洋服を乾かしたかったせいもある。とにかく二人は横になった。顔に照らされる太陽は、しごくきもちよかった。
「はるか、沖縄きもちいいだろ?」
「うん……、とってもきもちいい」
「そうだろ? この島は最高だぜ!」
「うん……
 ふたりは大の字で横になったままの状態で、目をつむっては黙り込んだ。とても静かな海。いや、すこしだけ海水浴者の声だとか聞こえてはきたが、そんなものはどうでもよかった。それを耳音から省けば波音しか聞こえてこないのである。そんな状態。ふたりにとってこの海は遥と剛しか存在していないかのよう。裸の君と僕。素っ裸のわたしときみ。それはまた大げさな話ではあるが。服はちゃんとつけていたし、透けていた遥の乳首も上着が乾いて見えなくなっていた。見ようとはしなかった。剛はおもった。なんだか手をつなぎたいな――。と。まあ、その夢に関して、今日はかなわなかったのだが、それでも剛は今日と言う日がとても素晴らしく感じた。それはまた、遥も同じ。服が完全と乾いてから、こんどは暑苦しさが全身を覆うと、遥と剛は家路につきたくなった。けっきょく、今日のところはもう帰ろう。そう言う話になった。二人はバイバイをしてから帰った。
 家に着いた。するとどうだろう? おかえりなさいと発するはずのお母さんが、見るところによると、何だかとても苦しそうにしているではないか。ここではじめて遥は、おかあさんが危ないと言う事を、肌でとても深く実感した。
おかあさん――

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