@原付バイクと風景画 2

 @原付バイクと風景画 2

は夕張。沖縄なんかじゃなくて夕張ですもの。いつか帰る時が必ず来るわ。だから大丈夫よ。安心してお母さんについてきてちょうだい。わかった?

 咲子はそういってから優しく微笑んで魅せた。それから遥を抱き寄せて温めるのであった。

 

 嗚呼、愛おしい子。愛おしい子。

 

 宮古島には、県立宮古病院という大きな総合病院がある。咲子はそこへ通う事になっていた。北海道の病院側が紹介状を書いてくれて何もかも手配してくれたことに感謝した。遥は宮古小学校に通う事になっていた。

 そんなに大して荷物はなかった。主人の荷物はどうしようかしら? そればかりが悩みの種。結局、捨ててしまおうと言う事にして貸家の契約を解除した。宮古島行きが完全に決定した瞬間でもあった。

 それからは非常に時の進み具合が早かった。飛行機は那覇空港からの乗り継ぎで宮古島へと飛んだ。およそ三時間ばかりの空旅行。それがまた退屈で遥はじたばたしていたが、咲子はスチュワーデスからお菓子をもらってなんとかごまかした。

 飛行機の窓から見る沖縄の海は、しごく青く透き通っていてきれい。サンゴ礁がまるでいらっしゃいのあいさつをしているかのように新鮮に映った。おかあさん、きれいだね――! と、遥は、はしゃいでみせたが、母の咲子はニコリとするだけで、あとは何も言わなかった。だいぶ後になって分かったのだが、咲子は、もうこの時には身体がだいぶ弱っていた。

 宮古島に着いた。

 琉球舞踊で使われる花笠(はながさ)の形を宮古空港はしていて、ロビーには大きな赤サンゴが展示されたガラス張りの支柱が何本もあった。遥はそれを見るなり、「こんなに小さな入れ物に入れられて可哀そう」だと咲子に話をした。遥はこの時にして、もはや自然人間界について考えるようになっていたのだ。

 ――やはり、この子は天才ね。

 絵の才能はこんなところにも表れているわ。咲子はそう思った。

 今回の交通費は夕張市がカンパで内密的に募ってくれた。ほんとうならば、生活保護法に抵触するのだが、職員たちには日本人のこころというものがあった。人情である。

 ありがとうございます! この恩は一生忘れません! ありがとうございます――! 

 咲子は遥の知らないところで大泣きしていた。それを知らずにいる遥は、平和そのものであった。

 それでいいの。遥には嫌な思い出なんか作ってほしくないもの。

 咲子は常々そう考えていたものだから、それらはまるで当然のことのようであった。情けをわが子にだけは見せたくはなかった。

 三月後半の沖縄県宮古島は、はやくも暖かい気温になっていた。とくに咲子と遥親子は、北海道という寒い土地からの移住だったため、その暖かさも暑すぎると感じるくらい。宮古島空港から団地に着いた。

「荷物置いたら、近くの海を観に行こうね」

「うん!」

 玄関の鍵は開いていた。言われていたとおりにポストへ手を伸ばしてみる。ちゃんと鍵は入れられていた。咲子はここで初めてほっとした。

 

 ――嗚呼、着いたのね。

 

 旅疲れがどっと押し寄せた瞬間でもあった。手荷物を置くと鍵を閉めてから、徒歩で近くの砂浜へと向かった。歩いて五分ばかりの場所にそれはあった。

「わぁ! きれい!」

「うふふそうね」

「ねねね、お母さん。なんか砂がキュッキュッて音が鳴るよ!」

「鳴き砂と言って、ここにしかないものなの。どう? めずらしいでしょう?」

「うん!」

 遥はあまりの暑さに咲子へ泳いでみたい!と申し出たが、咲子は風邪をひくだけよと許可しなかった。しゅんとした遥は立ち直るのが早かった。こんどは砂浜を駆けると、おかあさん、こっちだよ! と満面の笑みを浮かべる。それを見ていると、咲子はこの島へ来て本当に良かったな。と、思

 四月からの新学期は宮古小学校へ遥と同伴し、あいさつしてまわることが決まっていて、それを考えると咲子は気が気ではなかった。ほんとうにこれからしばらくは大変ね。身体の具合が悪くならなければよいけれど……。彼女は心配した。しかし、そんなこと言ってられないものね。よし、がんばるか! 咲子は心の中でそう気合を入れなおした。母親の責任とはこれほどまでに重いものとは、独身時代の時には考えもしなかった。只、流されるままに交際し、流されるまま結婚し、流されるままについてきた。その先での亭主の裏切り。それはもう立派な大罪。当初はすぐに離婚も考えた。考える暇がなかった。

 事件とは突然訪れては、あっというまに警察が持ち去る。話し合いの機会などもてはしなかった。咲子はとても悔しかった。悔しくて悔しくて仕方がなかった。どうして私がいるのに、どうしてなの? 夜な夜なひとり、もがき苦しんでいた。頭が狂いだしてしまいそう。しかし、それでも正常を保てたのは、紛れもなく遥がいることが大きかった。遥が母を救ったのだ。

 咲子はとても責任感のある女性。遥を絶対に守る。この一心。おなかを膨らまして、おなかを痛めて、苦しんで苦しんでようやく産まれてきた遥は、咲子にとって生涯の宝物。泣いてなどいられないけれど、泣きたいくらいに大切な存在なのだ。

 遥はまだおさない。これからきっと苦労するでしょうね。いろんなことがあると思う。実に様々なことがあるとはおもう。けれども、咲子は遥にどうか幸せになってほしかった。毎日、毎日、そう願っていた。

 嗚呼、神様が本当にいるのならば、どうかお願いです。こんなにもかわいい子をどうか未来永劫、お守りください。おねがいします、神様。咲子はついそう思ったこともあった。暫くしてから親子は帰宅した。

 部屋に着いたあと、咲子は散歩見つけていた小さなスーパーへ夕ご飯の買い出しへと向かった。今夜は何にしようかしら? などと言う事は考えていなかった。もう決ま

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