@原付バイクと風景画 4

 @原付バイクと風景画 4

い光景など見たこともなかった。遥はいつも心がうきうきとして最高の気持ち。

 

 

 冬の北風も忘れたようにしてやみ、春が訪れて、そして初夏をもう迎えているのではないのか? そう錯覚するほどに、今年の四月は咲子と遥にとってとにかく暑かった。それもそうだろう。何せ沖縄県と言っても最南端に近い島なのだから当然と言えばそこまで。

 遥はことしで小学二年に上がる。そう、この宮古島からまったくもってあたらしい学生生活を送るのである。まあ学生と言ってもまだ小学二年生だが、しかしながらもうすでに小学一年から学問は始まっていた。学生と言って何がおかしいのか、その返事すらかえっては来ないだろう。遥は立派な学生なのだ。

 彼女はまっさらの状態からこうしてみんなにあいさつしている。「おはようございます! 北海道から転校してきました! 兒玉遥です! なかよくしてください! よろしくおねがいします!」と。そして周囲はざわついていた。北海道ってどこ――? などと言った具合に。

 遥は視力が良かった。それも含めて学級の席順は決めていたに違いなかった。彼女はいちばんうしろの席。となりには土色にたくましさを感じさせる男の子。

「よう!」

 その子の第一声はそれ。

 遥はじどろもどろで

「ん?」

 と返した。さすがの遥も少しだけ緊張していた。

 男の子は次に言った。

「おまえ、かわいいな! よろしく。おれ、剛っていうんだ!」

 と。

 遥はびっくりしたようにして、

「つ、剛君でいいの?」

 と返事した。

「うん!」

 そう言って剛君は笑顔を見せた。

 担任の先生がみんなに遥さんが座ったところで、自己紹介を皆さんもしましょう。と発した。先生は女性教師。三十歳くらいのほっそりとした色白の美人である。おそらくは日焼け止めや日傘を普段から使用していたのだろう。この島には珍しく、日焼けは一切していなかった。髪の毛はロングのストレート。もちろん黒だ。端からひとりずつ起立をしてから遥に向かって自己紹介をした。遥はその一回ではとても全員の名前は覚えられなかったが、それでも、休み時間になればみんなが集まって、名前を憶えてなくとも仲良くなれた。よかった。遥は思った。先生は遥が絵が得意だと言う事をあらかじめ知っていた。情報を得ていたわけである。先生の名前は「金城里美」と言った。

「遥ちゃん」

 里美先生が放課後、声をかけてきた。もともと生徒数が少なかったために、遥を呼び止めるのに苦労はしなかったようだ。遥は返した。

「はい?」

「遥さんは絵が上手みたいね」

上手ってなんですか?」

「うまいってことよ。今度、先生に絵を見せてもらえない?」

 言って里美先生はさらに微笑んだ。

「はい!」

 二人は別れた。夜、夕食を取りながら遥は咲子に今日の出来事を話した。里美先生の事、隣席の剛君の事、同級生の事、休み時間の事、そして絵の話など、包み隠さずに話をした。

「たのしかった!」

 それが遥の気持ちだった。

「そう、よかったわね」

 咲子はどうやら一安心した。遥も肩の力が抜けたようにして今日の朝の緊張がほぐれていた様子だったものだから、遥の心配はしなくてよさそうね。と、ひとりそう思った。今夜は二人ともによく寝れそう。二十一時には消灯。次の日の朝になった。

「いってきます!」

「本当に一人で大丈夫?」

「うん!」

 遥は初登校の次の日には一人で登校していた。いや、そうではなかった。この団地には同級生が多かったし、小学生も多かった。ふたを開けてみれば、それら学生と一緒に登校するだけの話なのである。咲子は一日にしてそこまで仲良くなれた遥を大したものだと思ったし、頼もしいわね。とも感じた。遥は絵画をもっていくことも忘れてはいなかった。彼女の絵は咲子によって、いいやつを何枚か保管されていたのだが、その中でも宮古島の岬を描いた絵を咲子は遥に手渡した。学校に着いた。

 八時を過ぎて朝の会が始まると、あれだけ騒がしかった教室内が先生だけの声だけ響き渡る。それについて生徒らはなにも意識してはいなかった。ただ先生に注目する。それだけのはなしだ。出席を取り終えて朝の会が終わった。すこしばかり一時間目授業の支度時間があいだにあった。遥はそのタイミングで里美先生に絵を手渡した。先生はその時まだ丸められている画用紙を開くことはなかったが、大方予想はできていた。遥ちゃんはピカソのような絵を描く。それは先生の間では有名。だが、しかし、宮古島で彼女の絵を見たことのある人間は一人もいなかったものだから、想像ばかりが独り歩きして先生たちの期待が大きく膨らんでいた。この日の放課後、遥は里美先生に呼び止められた。先生は昼休み時間に遥の絵を確認していた。それは相当びっくりした様子。遥の絵の才能は本物なのだ。

「遥ちゃん、あなたの絵、凄いわね!」

 里美先生はそう言って、遥に笑顔で目を丸くして見せた。

「あなたには太陽の日差しがに見えるのね? 素晴らしいわ!」

 絵は、遥の描いた岬の上に書かれた太陽から、四角と三角の入り乱れた光線が空中に散りばめられている構図。岬自体もイラストのようなタッチで、それはそれで、感性がとても素晴らしかった。里美はこんなすばらしい絵を描く小学二年生を見たことが無かったも

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