オーミチャー 16

 オーミチャー 16

ョナルを求める。そう言うこと。快楽のプロフェッショナルは間違いなくソープ嬢だ。男はその居場所から抜けたやよいにもう興味などなくなったとでも言いたげにそそくさと渋谷へ向けて消えて行った。あまりのあっけなさに拍子が抜けたほど。住まいへ戻る。いや、店へ出勤した。

 店へ来たのが早すぎるほどだったためにホスト連中はたむろしていなかった。

 いま店のカウンターで一人だ。

 テキーラサンライズ用にある100%オレンジジュースを飲んでいる。

 店の電話が鳴った。やよいは取らない。営業用なら控室にあるもう一本の電話へかかってくる。

 今度は控室の電話が鳴った。あわてて裏へ回って受け取る。弟。

 どうだい? ねえちゃん。

 ああ、あなたね。大丈夫だったわ。

 そうかい、そいつはよかった。

 ええ、本当にそう。

 ところでねえちゃん。恋はしてんのか? 

 そんなのする暇がないほど忙しいの。

 そうかい、繁盛しているみたいだな。

 ええ。

 今度キャバクラの女連れて遊びにくらあ。

 それは結構よ。来ないで。

 どうして? 

 こんなみっともない仕事を見せたくないからよ。

 みっともない? 

 ええ、そうよ。

 幾ら俺たちが裏の人間だといっても、客から正々堂々、金貰っている以上はそんなことないぜ。気にすることはないさ。

 そう、そうよね……。ねえ? わたしたち、報われる日は来るのかな? 

 どうした突然! ねえちゃん、本当に気にしすぎだぜ! もっと明るくしな。そう言うのは従業員にまで伝染するんだぜ。

 分かった……。気を付ける。

 それでいいんだよ、じゃあ切るぜ。

 ええ。

 電話が切れた。

 営業準備時間が来る。やよいは控室で衣装に着替えた。

 これからホスト連中が続々と来るだろう。その前に済ましておきたかった。

 いつもの時間。いつもの仕事の始まりだ。

 早朝五時にようやく仕事が終わった。今日は長く感じた。

 不安。

 なにが? 

 あの客が来ないか心配だったのだ。

 あの客とは渋谷へ消えた男のことを言う。

 仕事帰り、吉牛へ行こうか迷った。が、今日は疲れている。コンビニエンスストアーでシーフードヌードルを一つだけ購入すると帰宅した。

 着替えてさっさとお湯を注ぐ。待ち時間は三分だ。

 ヌードルを温めているうちに冷蔵庫を開く。魚肉ソーセージがあったので取り出した。

 そこで思い出す。最近してなかったわね、と。

 考えてみればソープ以来していない。

 やよいは何だか恥ずかしくオナニーをしたくなった。

 嗚呼、たまらなく欲しいの……

 我慢できない。

 思わず魚肉ソーセージの封をといてから、それをシーフードヌードルへ突っ込んだ。

 するとどうだろうか? ソーセージは化学反応を起こして太く逞しく温かくなった。

 さあ、オナニーの始まりだ。

 嗚呼――! 

 彼女は魚肉をフェラチした後、一噛みして残りをぜんぶバギナへ突っ込んだ。

 ハアハアハア……。足りないのぉ! もっと欲しくてたまらないのぅ――!、

 人差し指でクリトリスをいじる。愛液と共にソーセージが放出された。

 繰り返し同じことをする。

 太い――! 嗚呼、逝くぅ――! 

 潮を吹くと同時に肛門に力が入る。

 お尻にも入れてぇ――! お尻も犯して――! 

 淫乱女、その一言に尽きた。

 もう快楽の味を覚えてしまっている体は素直に反応する。

 ソープへ戻りたい。ソープへ戻りたい。ソープへ戻りたいのぅ――! また逝く! 逝っちゃう――! 嗚呼――! 

 今夜のそれは激しい。痴女的オナニーだ。

 美味しかった。たまらなく美味しかったのだ。

 それに何の矛盾も存在しない。やよいはセックスマシーン。もうこの世界から抜けることなど不可能だ。

 喘いで喘いで喘ぎまくる。それがたまらなく素敵に感じたソープ嬢時代。懐かしい記憶。そして恥ずるべき記録だ。

 なんてことなの? わたしは、わたしは……

 結局、やよいは店の人間とした。セックスをしたのだ。これに何のお咎めもなかった。心というものも存在しない。只のお遊びでしたこと。もちろん、こんなことは生まれて初めての経験だったものだから、行為の後、自分は本当に変わったのだわね、と感慨深くもなったりした。

 昔は酷いあばた顔で、少年探偵団のリーダーを逆強姦して、それから先生に犯されて、ソープでSMをして、マットプレイをして……。そんなはしたなくてみっともない女が男を選んで、それで尚且つ遊びでセックスができるようになるだなんて、本当にこの世は分からない事だらけだわ。

 それでね、聞いてちょうだい。

 これこそまさにわたしがわたしでなかった時代なのよ。

 いつしか誰かにその話をした。無論、相手には何が何だか訳がわからなかっただろう。それ位にやよいの人生は滅茶苦茶。それは他の園児も同じようなもので、精神疾患へ追いやられるのも無理はない話。ほとんどの子は精神が極限までやられてしまうのだ。それがこの世の果ての子供たちの運命。

「これ、わたしの番号です――

 やよいが携帯電話を保有した時に初めて番号を教えた相手が吉牛のアルバイト生。そう、あの大学生。

 男は相当喜んだ。そうでもなかった。

 ええっとぉ、こう言うのは困るんですよ。僕お金持ち併せてませんし、暇がないものですから。悪いんですけどもお返しします。

 お金の心配なら要らなくてよ。わたしがおごってあげるから、だから受け取ってこんど電話かけてちょうだい。わたしのほうから会いに来ます。

 ええ! 良いんですか? 困ったなぁ……。分かりました。こんど電話かけますね。

 ありがとう、そうしてくれると助かるわ。

 ――危なかった。もう少しでこの店の笑いものになるところだったわ。そして二度と来れなかったでしょうね。

 マンションへ帰る。玄関口を入って鍵を掛けたところで、突然、茜が出てきた。

 あらあら、お疲れ様もいい所ね、お嬢様 

 あら? 誰かと思ったら茜ね? 最近出てこないから、霊が呪い移ってることも忘れていたわ。どうしたの? 言いたいことはそれだけじゃないでしょう? 

 分かってるじゃない。あなたね、最近、調子に乗りすぎよ。なにをモテる女を演じているのかしら? そろそろ疲れたのではなくて? あなたにはあなたの身の丈ってものがあるでしょう? もうお忘れかしら? この仮面女。

 仮面女とは失礼しちゃうわ。わたしだってピュアな女なのよ。もう少し言い方があるでしょう? 

 何を言っているのかしら? オーミチャー、あなたね。あなたはアバタ顔の麻婆豆腐で生まれてきたの。その事実は変えられなくてよ。もしかしたら結婚できるとでも思って? とんだ笑い話だわ。きいてオーミチャー。あなたは何かもっと大事なことがあるのではないのかしら? 恋愛なんてしている暇があると思って? 

 もっと大事な事? それはつまり弟のことかしら? 

 そうよ。あなたがこうしている間にも彼はどんどん深みに嵌ってる。あなただけが幸せになれると思って? 彼が豚箱行きならあなたは中華鍋の中なのよ――

 大学生と生まれて初めての交際関係。それは失敗だらけでもあったし、恥ずかしかった。

 さあ、何をしましょうか? わたしが勘定を支払うのだからしっかりリードしなきゃ。

 しかしリードの仕方が分からない。夜の女であるにもかかわらず分からないのだ。困った。そうでもなかった。彼の名前は浩二(こうじ)。浩二はしっかりとした大学生だ。そして押しが強かった。ぐいぐいと引っ張ってくれる男。頼もしかった。嬉しかった。尊敬した。崇拝した。愛おしく感じた。

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