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小説家で詩人、占い師の滝川寛之(滝寛月)の国際的なブログです。エッセイ、コラム、時事論評、日記、書評、散文詩、小説、礼拝、占いにまつわること、お知らせ、など更新しています。よろしくね。
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オーミチャー 20
オーミチャー 20
良い按配で潮を吹いた。無我夢中でもがき喘ぐさまは地上へ揚げられた人魚姫。鰓呼吸ができなくて苦しんでいるような光景だ。
ほやき代ならあるんですよ。いくらででも出しますとも。ですから、もっと純正のポンをちょうだいな。
三日三晩寝て居ない状態が続く中でカップラーメンをすする。だけども全然美味しく感じない。薬によって空腹から免れているからに違いなかったが、そんな事などどうでもよかった。食べたくはないものを食べる。
良いかしら? 売人の話(言いつけ)通りにするのよ。
ええ、一応、わたしは芸能界の人間でもあるのだものね。容姿は大事だわ。
なんだ、分かっているじゃない。
ねえ? 頭おかしくなるくらいにきもちが良いの。これって天国かしら? 地獄の三丁目なのかしら?
アクメ顔になりながら泡を吹く。鼻の穴からも耳の穴からも潮を吹いているような錯覚にさえなっていた。もはやどうしようもない。狂った腰は幾度となく痙攣を発作する。
これじゃまるでだるま地獄ではないの。そうか、わかったわ。これはやっぱり地獄だったのね? 気持ちの良い生き地獄。小学生のころに両脇をこちょこちょされたときのような感じと似ているわ。
そうね、そうかもしれない。なんということなのでしょう。わたしはこれが欲しかったの。太くてたくましいペニス君とアメリカンドック。嗚呼、たまらないわ。さっそくマスタードとケチャップを波のように付けてほおばってしまわなきゃ。誰にも取られないように。
先に食べるのはわたしよ。わたしが一番なんだから。
乱舞そのものの交尾。空中に舞った接吻。地上へ叩きつける汚物処理。気持ちよいならなんでもした。狂った。乱れたセックス劇場はそこにあった。
一体誰がとめる? 止められるものはいない。キメセク(覚醒剤でキメてセックスをすること)を覚えてしまった身体はもはやチンパンジー以下だ。物事の判断などつくはずもない。未来の事すら考えられなかった。目標は只一つの白い粉(覚せい剤)だ。
やよいは夢を見ていた。とてもとても快楽に満ちた世界。ザナドゥ―(桃源郷)を。紛れもなく見た。体感した。潮を吹きまくる。よだれを吐きまくる。最後は泡を吹いて失神だ。そんな世界を見ていた。
太いペニスなら何でもよかった。白人から黒人。日本人から外国人。異種混合は素敵だと思った。いろんな精子を飲む。白に黄色に緑色。飲んだ。飲みまくった。
男のひとのタンパク質はおいしいの♪
そう発して微笑んだことがある。にやりと笑った。
次はどちらさんがわたしの相手をしてくれるのかしら? ほうれ! おっぱいをお飲みなさいな。白い乳液の味はどうかしら?
やよいは妊娠している。構わなかった。
どうせポンで死んでしまう赤ちゃんなのだから放っておけばいいのよ。それよりも大きくなった乳房はたまらないでしょう? さあ、飲んで♪ わたしもあなたのが飲みたい♪ さあ、おったてなさいな。精子を尿ごとわたしの顔面へお出しなさいな。全部飲んであげるんだから。
狂った女だ。誰もが言う。
ふん、何にもわからないくせに。よく言うわね? わたしの味方はこの白い粉だけ♪ あなた方は道具でしかなくてよ。
やよいはもはやジャンキーというに等しかった。いや、ジャンキーである。薬を打ち続けないと正常を保てない。ポンとは一心同体のようなもの。そう言えば最近、芸能の仕事がめっきり減った。影でうわさになっているらしい。表向きはきれいなお仕事だ。薬中はお払い箱なのである。ホストクラブの商売も出向いていない。一日中部屋の中に閉じこもってセックス三味となっていた。
ポン中は攻撃的だと言うが、やよいのセックスの趣味も様変わりしており、痛みの成す快楽でないと物足りない。次第にエスカレートしていってはSMプレイを愛好するようになった。激しいプレイとピアスの穴あけプレイ。乳首にもクリトリスにも穴をあけた。それでも物足りない。唇から鼻からまぶたにもピアスを何重ぶら下げていた。入れ墨も彫る。背中には立派なハンニャが角を出して睨みつけていた。
貯金の全てはポンへ行った。たまにお遊びでソープで働いてみたりする。快楽のバイトがしたくなるのだ。何本でもペニスを入れたかった。給与はシャブである。狂ってしまった人生だ。最初からおかしかった運命だ。そう思っていたし構わなかった。そのとき思考があったのかないのかは別として、たとえ正常でもソープ嬢へと戻っていただろう。芸能界の娘だ。客は飛び上がって大金をはたいてくれる。しかも家畜のように蹴っても突いても悲鳴を上げて喜ぶのだからしょうがない。
段々、幻覚を見るようになる。幻聴も酷くなっていた。ウジ虫が骨の髄を掻きむしっているのが感じ取れてかゆく感じた。ぼりぼりと皮膚をむしり取る。爪をとがらせて肉をえぐるのだ。当然跡は残る。しかし快楽なのだ。かゆさから解放された快感なのだ。この時には正常なまなざしではなかった。常に上目で頭がおかしくなっていることを容易に区別できた。
ああ、に濁点を打ったような喘ぎ声。終いには猿ぐつわまでさせられてよだれを垂らす始末。いや、穴の開いたボールを口にはめ込まなくとも常によだれを垂らしていた。末期の麻薬中毒者である。精神病院の入院病棟特別室に多いあれだ。檻の中に全裸で閉じ込められるそれと似ている。クレイジーなのだ。発狂したサル以下なのだ。頭がおかしい。基地外である。もはやその状態と化していた。
抜けられない麻薬の快楽。天国の次は地獄が待っている。そして朽ち果てるのだ。死んでしまうのだ。哀れな様態を露わにして。
やよいは精神病院へ強制入院させられた。弟の計らい。
警察に逮捕されるよりはましだろ? どのみち独房行きだったんだからよ。でもあれだぜ? ねえちゃん、もう元には戻らねえ。脳みそを治すのは無理なんだ。今の医療では不可能なんだよ。チンパンジーは人間になれねえだろ? それと同じようなもんだ。だから言ったんだよ。シャブきめてセックスすんなってよ。全く可哀そうな話だぜ。こうなったのも表の男に惚れたからだ。闇の世界に居ときゃよかったんだ。それについて俺も反省しなきゃなんねえ。ねえちゃん、達者でな。もう見舞いには来ないぜ。
もはや日本語ではない奇声を発して鉄格子をがんがん鳴らしている。やよいは尿も糞も地べたのコンクリートに吐き出していた。職員が檻の外からホースで流す。排水溝はそのために大きく口を開けていた。風呂も水ホースだ。石鹸やシャンプーなどはない。たわしすら与えられなかった。全裸で崩れた乳房をぶらんぶらんと婆みたいに揺らしてみっともない。職員は酷い臭いにたまらずマスクをしている。騒ぐたびにスタンガンの電気地獄が待っている。イタイイタイお仕置きだ。もはや人間扱いなどしていない。家畜だ。家畜以下だった。
独房の夜は寒い。特にコンクリートの地べたが凍てつく。しかも、この檻の中では幻覚の世界が現実として存在した。排水溝からあふれてくるゴキブリの群れ。口の中からはい出るウジ虫ども。筋肉の筋を這いずる寄生虫たち。天井からはタランチュラがいくつも降ってきた。幻聴も響くようにして届く。”あーあ、もう殺すしかないな。”だとか、”貴様の弟も同じ目に合わせてやる。”など。しまいには琢己の悲鳴まで聞こえてくるではないか。
”お姉ちゃん! 助けてくれぇー!”
いっひっひ! いっひっひっ!
定期的に覚せい剤を薄くした注射を打たれる。少しずつ覚せい剤の効能を遠ざけていく治療法である。担当医は警察へ届け出ていない。ここは裏世界の人間行きつけの精神病院だ。手筈は整っていた。医療費は高額だが秘密は守れる。
モルヒネを打たれるのは決まって食事の時間帯だ。寝て居るところで栄養剤の点滴をする。固形物はいっさい喉を通していない。体は痩せこけており寒さに弱かった。せめて点滴を打つときくらいは毛布を被せられた。
目覚めは毎回セックス最中。職員に犯されぱなっしである。暴れたところで独房へと戻されるわけだ。皆さん性病予防の注射は受けている。コンドームも着けていた。
「今日も芸能人の守屋茜とやってやったぜ」
「腐った林檎でもよ、興奮しちまうよな」
「だぜ? 料理の仕様によっちゃ美味いことは美味い」
哀れなものである。堕ちてしまった女だった。最低最悪以下があるという物的証拠みたいなものだ。生きる屍とでも言えばよいのだろうか? やよいの精神は離脱したままで元に戻らない。一体いつごろ正気へと戻るのだろうか? 病院の連中など良くならなくてもいいと考えているに違いない。これではまるで最終処分場のカラスにやられる豚の丸焼き状態だ。死んだ後も経済的需要があるわけだ。
やよいは夢を見ていた。時折、意識が別の世界へ飛ぶことがあった。勿論、もうすでに飛んでいるようなものなのだが、それとは異なる幻ではない本当の夢だ。それは三次元を超過して四次元。真っ暗闇のような、それでいて宇宙の美しさが残されているような神秘的空間。星々は見えない。だけども身体は照らされていて明るかった。エコー気味に声が聞こえる。オーミチャー、オーミチャー。
「茜? 茜なの?」
返事は来ない。思う。じゃあ誰だったの?
やよいはこの世界が怖くなった。
もしかしたらここから帰れないのではないだろうか? いえ、まって。それは良いことのひとつのようでもあるじゃない? でもちがうの。ここはきっと天国ではない。それなら、ここはどこなの?
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